国家試験は学生生活の集大成

 看護師になるための最後にして最大の砦は看護師国家試験、いわゆる「国試」です。国試に合格することは、看護師となるための「積極的要件」であると保助看法によって定められています。つまり、どんなに成績が良くても、就職先が決まっていても、国試に受からなければ看護師と認められません。まさに学生生活の集大成、しかも一日限りの一発勝負というプレッシャーとの闘いになります。
 
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 現在のところ看護師の国試は一年に一回、2月下旬に執り行われます。受験資格は

① 看護大学・看護専修学校を卒業又は卒業見込みの者
② 准看護師で看護専修学校・短期大学を卒業又は卒業見込みの者
③ 外国での看護師養成校卒業、外国での看護師免許取得者で、厚生労働省に国内専修学校や大学と同等の技術保持と認められた者

となっています。受験科目は10科目、学校で学んだ全ての科目からのランダムな出題で、マークシート方式です。更に細かくは、午前:客観式必修問題30問・客観式一般問題120問の2時間45分。午後:客観式一般問題30問・客観式状況設定問題60問の2時間30分となっています。

ここで注目したいのは午前の「客観式必修問題 30問」です。これは2004年度に行われた試験内容の見直しに伴い導入されたもので、合否の絶対基準となる問題です。人体の構造、看護の社会的・倫理的側面、看護対象・看護活動などに関する基本的な出題がメインです。必修問題のみで8割の正解率(30問中24問の正解)が求められ、他の問題で高得点をとっても、ここで8割を切ってしまうと不合格になるのです。点数だけ良くてもいけないという、資格に必要な適正が重要視されてきた証といえるでしょう。

 いま、看護師不足という深刻な問題を社会が抱えるなかであっても、医療の「質」の向上のためには看護師のレベルアップが重要な課題なのです。そういった必然性から、ハードルが高くなる傾向は否めません。しかし闇雲に学生を篩(ふるい)にかけて落とそうとする試験ではなく、あくまでも学生生活で学んだことの延長上に国試があると考えてください。授業で学んだこと、実習で経験したこと、国家試験という壁に向かっていかに対策をとったか、ということが顕著に影響します。年度によって求められる正解率は変わりますが、全体の7割、安心するためには8割は欲しいところでしょう。

 時代とともに看護を取り巻く体制にも変化が見られるようになりました。資格取得は看護師になるための必須条件であるとともに、ひとつの過程であるということを忘れないでください。たとえ一生ものの免許であっても、看護師は日々精進し一生勉強することが求められる職業です。過酷とも言える学生時代を乗り越えてきた「看護師のたまご」の皆さんなら、国試に合格して素敵な看護師さんになれる日が必ず来るはずです。

実習を思い出そう

 看護師の国試は、毎年合格率が9割前後と高いのが特徴的です。これは学生の勤勉さによってはじき出された数字であり、決して簡単なものではないのです。むしろ単純な出題はほぼ皆無で、難易度は高いといえます。4択のマークシート方式で「正しいのはどれか」「誤っているのはどれか」という設問が多いため、正誤の勘違いをしてしまうとさあ大変!わかっているのに点数が取れないと、大切な結果に響きます。また、正解が二つでその組み合わせを問う問題もあり、じっくり考えて選択しなければ思わぬミスを起こします。選択は慎重に、またその基本としては消去法が有効ですが、中には意地悪な出題もあって受験者を悩ませることは必至です。

 悩んだときには、実習を思い出しましょう!教科書にはない、生きた教えやヒントが必ずあるはずです。実習のレポートを書く上で、最初に頭を悩ますのは患者さんの「全体像」の把握でしょう。全体像をつかむためには、まずは解剖生理・疾患の理解が必要です。文字や図解を見ただけではピンと来ないような難しい解剖学的な情報も、担当した患者さんを通してリアルに、より具体的に理解できることもあったのではないでしょうか。これは国試に挑む上で大きな強みになります。症状や治療方針、看護ケアひとつをとってみても、そこには何故それが必要なのかという意味が必ずあります。国試は単純な暗記だけで乗り越えられるほど容易ではありません。実体験に裏づけされた記憶の断片をつなぎ合わせて導く答えは、国試で大いに活用されますし、その先もずっと忘れることはないでしょう。

 法規や制度、衛生の動向など実習の管轄以外の分野に関しては、暗記しなければ厳しい問題も出題されやすいでしょう。いま、毎回の国試の傾向からみて暗記が必要といわれるものは、出題範囲全体からピックアップすると、数にしてざっと300ほどあるといわれます。各種参考書なども、こぞってこの暗記の方法などを説いてありますね。これは確実に点を取るためには必要な勉強方といえます。しかしどれが出題されるかわからない点、状況設定問題などの試験の形式から考えても、暗記法よりも多角的な視点で事柄を捉えておく必要があるといえます。実習ではカルテなどから患者さんの情報を見て、実際に患者さんを見て、あるいは訴えを聞いて、ひとつの情報でも様々な側面から考えて理解する勉強法だったはずです。薄っぺらな知識ではなく、より立体感を持って脳に焼き付いているこの情報を、国試でこそ発揮させて良い結果を得たいものですね。

目指せ8割!模試は己を知る鏡

 看護師国家試験では、看護師に求められる知識や技量、看護師としての心得なども全て試験問題に出題されます。合格率こそ9割前後で以前と変わらないものの、年々ハードルは高くなりつつあるのが現状です。国試は学内の学期・科目ごとの試験と違って、全教科、10科目からランダムに出題されます。試験会場も全国で11箇所と決まっており、開催地以外からも続々と集まって、ひとつの会場に数千人にものぼる受験生がいるわけです。そんなものものしい雰囲気の中での試験ですから、学生の緊張感は相当なものですよね。やはり国試の傾向や試験の雰囲気をつかむためには、模擬的な試験形式、いわゆる模試が大変有効です。模試会場に出向いての受験なら、なおさら国試に似た雰囲気が味わえます。試験自体の形式・問題構成も国試さながらに作られていますし、回数を重ねるたびに実力は付いてくるでしょう。

 数々の問題集や参考書にも役立つ情報は載っていますし、もちろんベースは過去の国試から抽出されたものだと思います。しかし自分でやる勉強にはやはり限度があります。また、多くの模試では採点結果のデータが細かく出され、自己のレベルや全国対象のランキングなどが明らかになるのも良いところです。教科ごとの自分の弱点なども良くわかる上、その後の自己学習の指針にもなります。模試はまさに実力を映し出す鏡といえますので、これを活用しない手はないと思います。

 最終学年時には“実習の合間に模試”という過酷かつ過密なスケジュールが強いられます。この段階では実習のレポートに追われ、なかなか集中して勉強ができず、思うような結果が出ない辛い時期です。しかし焦る必要はありません。はじめから合格ラインに届く結果をだせる人は、まずいないでしょう。やがて実習も終わり、本格的に国試一本に的を絞って勉強し始めてからが、最も成績の伸び率が高くなることは言うまでもありません。実習で精一杯やってきたことは、知らず知らずのうちに実力として備わってきているものです。必ず国試の試験勉強に良い影響を与えてくれます。ひとつひとつ、そのときにやるべきことをこなしていくのが、成績を上げるポイントなのです。目標は7割と言いますが、ここはひとつ、8割を目指して安心したいところですね。

一生ものの看護師免許に思うこと

 国試に受かれば看護師免許がもらえ、実際に看護師として働くことができます。この免許は自動車の免許のように一定期間ごとに更新の必要もなければ、免許を所持しているだけでいつでもどこでも働くことができる素晴らしいアイテムです。これは働く上で便利な、そして大きな魅力ともいえるでしょう。しかし実際の医療界において、この資格試験のあり方について疑問を抱く声が聞かれるのは事実です。特に現代の医療は日々進歩していると言っても過言ではなく、常に新しい情報を知識の中に取り込む必要がある分野です。さらに人命に関わる責任の重い職業ですから、「資格を取れば安泰」という安易な考え方が浸透してしまっている現状は、今後必ず問われてくると考えられます。医師や看護師の免許の更新が必要な時代がやってくるのは、時間の問題かもしれません。

 実際に看護師として働きだすと、受験勉強と同等・あるいはそれ以上の勉強が必要だということがわかるはずです。日々の仕事に技術や知識の向上が欠かせず、必然的に勉強をせざるを得ない理由があるわけですが、国試に合格するという受験生のような具体的な目的はないため、自己との闘いになります。結果、勉強をした人としない人の実力の差は明らかです。病院によっては独自の卒後教育システムがあり、自己を高める活動・自己啓発に力を入れるところもあるようです。看護師が看護師として働くためには、常日頃の学習や向上心を持って何かに挑戦し続けることが必要なのです。

 とはいえ、もし数年おきに免許が更新となったら大変だな、と思っている人も多いはず。学生のときのようにまとまった時間を受験に充てられるわけでもなく、何しろ日々の仕事は忙しい。その忙しさの中にはやはり、勉強や自己啓発のための取り組みもあるでしょう。更新試験が行われない現状は、看護師の技量や知識の向上が、各個人の意思に委ねられているからだとも考えられます。逆に言えば、勉強することが看護師の義務であり、「資格を取ったら最後」ではなく、あくまでも国試合格がスタートラインで、看護師の勉強は一生続くのです。なにはともあれ、目の前に国試の合格という大きな目標がある人は、学生生活のゴールであり、看護師人生のスタートでもある合格を手に入れられるようがんばってください!


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