「看護師資格」とは?

世界の医療は、国家や文明の程度により差はあるものの、近年飛躍的に進歩してきました。日本の医療も同様に文化国家の先端を邁進しているといえますが、まだまだ多くの改善すべき課題を抱えています。

そんな現在の医療情勢において、看護師不足は深刻な状況で、海外からの看護師の派遣についても議論されているといいます。今日の医療問題の改善には、まず看護の質の向上は必要不可欠であるし、そのための看護師の人員確保は最重要課題ともいえます。
 
では看護師資格とは一体何でしょうか。そもそも看護師になるためにはどうしたらよいのでしょう。時々「学校を出るともらえる」とか「通信教育で資格が取れる」と思っている方がいますが、それらは間違いです。

看護師資格を得るためには、正確には「高校を卒業してから文部科学大臣または厚生労働大臣が指定した看護師学校養成所(大学、短大を含む)で3年以上の教育を受け、看護師国家試験に合格する」ことが必要となります。

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国家試験に合格し、厚生労働大臣から免許をもらうと晴れて看護師と認定されるわけです。
 
また、免許を取るためには備えておかなければならない要件があり、「保健師助産師看護師法」(以後保助看法とします)には「積極的要件」と「消極的要件」として明確に記載されています。

積極的要件とは、先述したとおり「看護師国家試験に合格すること」であり、消極的条件(欠格事由)とは「目が見えない者、耳が聞こえない者、または口がきけない者」とあります。人間の命を扱う職業であるだけに、こうして絶対的な条件が法の中で定められているわけです。
 
看護師の資格があれば、保助看法に規定されている制限の範囲内で看護業務が行えます。業務としては主に「傷病者若しくは褥婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うこと」です。つまり看護師以外は看護業務を行ってはならない「業務独占」であり、基本的に全ての診療の補助行為ができます。現在では「静脈注射」も診療の補助行為としてやって良いことになっています。

 平成13年には、資格の名称について男女で異なっていることを改め、「婦」「士」を同等に「師」と統一する改正が行われています。女性が圧倒的に多い職ではありますが、今後はもっと男性の看護界への参加が期待されます。

プロフェッションとしての看護師は活躍の場も多く、魅力にあふれています。世の中のニードも非常に高く、看護師資格は今後さらに注目が高まってくることでしょう。

看護師資格でできること

看護師の行う業務は、医師以外の看護師資格のない者は行ってはならないという決まりがあります。医師も薬剤師も、資格の必要な職業はどれもそうですが、このことを「業務独占」といいます。医業は医師が独占的に行うものとして医師法に定められていますが、医師のみで診療を行うことは不可能です。

そこで補助的役割として看護の職が確立し、歴史の中でその社会的地位は向上し現在に至ります。こうして保健師助産師看護師法に規定された業務独占のもと、看護師は基本的にすべての診療の補助行為ができます。また、補助だけでなく看護のスペシャリストとしての役割、例えば患者さんに合った看護計画の立案、心身のケア、社会復帰への援助などを行います。病院をはじめ医療施設で働ける上、実際は病院以外での求人も多く、保育園や学校、社会福祉施設などでも働くことが可能です。
 
近年は診療報酬改定や医療制度改革によって、どこの病院も共通して看護師の獲得に必死です。現在全国には130万人の看護職者がいます。高齢化が進む昨今、それでも全国で約4万人の看護師が不足しているといわれます。ゆえに需要が高く求人が多いのも特徴で、看護師が自分のやりたい仕事を選び、理想とする看護の方向性に向けて転職する場合も多くあります。資格を活かしたスキルアップの道は実に様々で、看護職の重要性と大きな可能性を示しています。
 
スキルアップ、キャリアアップとしてメジャーなのは(短大・専門学校出身の有資格者が)看護大学へ編入したり、保健師・助産師学校へ進学したりと、もうひとつ上の資格を目指すことです。

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また、キャリアを活かしてより専門性を磨くということで「専門看護師」や「認定看護師」という資格を取ることに注目が集まっています。

しかしながら今の日本では残念なことに、その専門性を十分に活かせる場所があまりないのですが、今後必ずや役に立つ日が来ると思います。他にも、日本以外の国で看護職に就く(海外看護師資格を取る)、あるいは発展途上国の医療協力に参加するなど、積極的に社会貢献ができます。資格とやる気、体力と向上心があれば、活躍の場は広がるばかりです。
 
このように資格さえ持っていれば、スキルアップや転職という選択もできるのが看護師資格の強みといえます。また需要の高さから勤務先を自分で選べるなど、不況の影響を全く受けない安定感は他に類を見ないほどです。

看護師を目指しているあなたが抱いているイメージは、資格を取得して自分が実際看護師となって働く姿でしょう。そして看護師資格のもっと向こうに見える開けた世界を想像することは、資格取得に向けて自らのモチベーションを高める良い手がかりとなるはずです。

看護師の「資格」と「資質」

看護師を志す方の多くは、看護師という職業に何らかの魅力を感じ、情報あるいは経験などから看護師のイメージを持っておられると思います。志す理由はどうあれ、誰しもイメージが湧かない職業に就こうとは思わないはずです。逆に言えば、看護や医療といった分野は日常生活とのつながりが深いため、身近に感じている証拠と言えるのではないでしょうか。また看護の概念は、古来より「自分以外の他人の世話をする」という、いわば本能のように人間が有する能力のひとつともいえます。

その対象は肉親から始まり、いつしか血縁のない他人にまで広がりを見せ、やがて今日の看護に至ったと考えられています。身近に感じられる理由は、「看護の心」が万人に共通する「思いやりの心」であることに他なりません。看護師を志しているあなたは、思いやりを他に向けることができるという時点で、もうすでに看護師の「資質」があると言えるのです。

確かに、資格を取得するまでの道のりは決して簡単ではありません。

国家試験に受かれば看護師にはなれますが、最も重要なのは取得に至る学習の過程と体験にあります。実際のところ学校では、人体の構造から疾患の理解など看護師に必要な知識の習得はもちろん、人間の本質や、学校生活・実習の中で人間関係の基本を学び、看護師としての大切な基盤となる「看護の心」を実体験から学びます。生きた教えというのは、身に染み付いて忘れないものです。国家試験はこのような学習すべての集大成ともいえ、看護師資格には体験により育てた看護師としての「資質」も含まれるのです。

看護師の魅力は言い尽くせないほどたくさんあります。

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資格そのものは一生ものですし、需要も多く社会的地位もずいぶん向上しました。責任が重く、重労働や過酷な勤務体制などが問題にもなりますが、喜びや充実感は非常に大きい仕事です。

また機械ではなく人間相手ですから、相手から感謝されたり、相手から学ぶこともたくさんあったりと、人としての成長も見込めます。やりがいを感じられない仕事を続けることは困難ですよね。自分が人や社会の役に立っていると感じられることはすばらしい事です。

誰もが「自分は看護師に向いているのだろうか」と自問し、悩む時はあるものです。資格を取るまでも、また看護師になって仕事をしながらもその「壁」と向き合う場面は出てきます。そんな時はあなたが看護師を志した動機を思い出し、なりたい看護師のイメージをもう一度胸に思い描いてみましょう。その答えは、「向いているに決まっている」です。なぜなら、看護師を志した時点であなたの中には看護師としての資質が十分にあるのですから。

准看護師・正看護師の違い

看護師は「正看護師」と「准看護師」に分かれるということは、多くの人がご存知だと思います。ではその違いは何かということになると、はっきりとした答えが出せる人は少ないのではないでしょうか。まず、両者の保助看法による規定は以下の通りです。

<看護師>
 構成労働大臣の免許を受けて、傷病者もしくはじょく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。(第5条)
<准看護師>
 都道府県知事の免許を受けて、医師、歯科医師又は看護師の指示を受けて、前条に規定することを行うことを業とする者をいう。(第6条)

 この規定によると看護師が国家資格であるのに対し、准看護師は都道府県知事免許という点が大きく違います。また看護師が主体的に看護を行えるのに対し、准看護師は独立した看護業務は出来ないということになります。しかし指示のもと行える業務はほぼ同じというわけです。医師には准医師という資格はありません。なぜ看護師だけに准資格が存在するのでしょう。

 准看護師の制度は、戦後の看護師不足に応ずる措置という形で発足されたものです。いずれは正看護師養成制度への統合や、正看護師資格への一本化なども視野に入れた協議がなされる一方、現在准看護師は看護師総数の約半分を占め、医療界を支えているのも事実です。社会人の看護職への転向、早く医療界で働きたい若い世代などにはありがたい制度かもしれません。しかし准看護師の資格取得者は、いずれ正看護師の資格を目指す人が多いのも事実です。世論や看護を取り巻く情勢からも、現准看護師には正看護師への移行教育が提言されていますが、様々な理由から准看護師制度の廃止は難しいのが現状です。

 一本化が必要と叫ばれながら、はや20数年が過ぎている現状には幾分疑問を覚えます。何よりも同じ業種でありながら階級や格差がなくならないというのは、働いている立場にあっても釈然としないものがあるでしょう。実際に准看護師養成学校は減少してきていますし、今後何らかの大きな動きがある可能性も否定できません。今後はこのような制度の変化を想定し、初めから正看護師の教育を志望することが賢明かと思われます。


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